ヨモギ
らんまん植物,万葉集でよまれた草木
- 花名ヨモギ
- 学名Artemisia princeps
- 別名モチグサ, モグサ
- 原産地中央アジア、日本在来種
- 開花場所野原・畦道
- 開花期8月, 9月, 10月
ヨモギとは
ヨモギ(蓬、Artemisia princeps)は、中央アジア原産で日本の在来種である、キク科ヨモギ属の耐寒性常緑多年草です。日本全国の畦道や山野に自生します。
別名で、「サシモグサ」や「モチグサ(餅草)」、「モグサ」と呼ばれます。蓬は「菖蒲」と同様、香気が強く邪気や穢れを祓い薬効を持つ生薬とされました。
英名は、Japanese mugwort です。草丈は50~100cmです。葉長8cm、葉幅4cmの羽状複葉で互生して付きます。
春に出る若芽を摘んで入れて搗いた餅で作るのが草餅ですが、万葉の時代に漉き込まれた緑色は、蓬ではなく母子草(ハハコグサ、ゴギョウ)が使われていた可能性もあります。葉裏にある白毛を集めたものは灸の「モグサ」の材料となります。
夏に円錐花序を伸ばし、花径0.15cmほどの目立たない淡褐色の管状花から成る頭花を咲かせます。夏~秋に花粉が飛散し、痩果が鳴ります。ブタクサと同様、蓬の花粉は秋の花粉症の原因植物となるので、アレルギー症の人は植物に近づかないよう注意が必要です。
また、セイタカアワダチソウ(背高泡立草、学名:Solidago canadensis var. scabra)と同様、「アレロパシー(他感作用、allelopathy)」と言う、地下茎から他の植物の発芽を抑制する物質を分泌します。
万葉集と蓬
万葉集には、飛鳥時代から奈良時代にかけて130年間(629年~759年、7世紀前半~8世紀半ば)の歌が収められています。
万葉集中でヨモギ(蓬)は「余母疑(ヨモギ)」と記載されています。
第18巻 4116番歌
久米朝臣廣縄(くめのあそんひろのり)が、天平二十年(西暦748年)に越中の年次報告のために入京(奈良)し、翌年の天平感宝元年(西暦749年)に無事帰国したことを祝って開催された酒宴の席で、大伴家持が久米朝臣に歌った歌(久米朝臣妻になり切っって詠った歌か)。
作者:大伴宿祢家持
台詞:國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首
時期:天平感寶元年閏五月廿(西暦749年)5月27日
登場する草木:蓬と菖蒲(ここでは蓬を取り上げます)
原文(長歌の途中抜粋)
保止々支須 支奈久五月能 夜女具佐 余母疑可豆良伎 左加美都伎 安蘇比奈具礼止 射水河 雪消溢而 逝水能 伊夜末思尓乃未
読
保止々支須(霍公鳥) 支奈久(来鳴く)五月能(の) 夜女具佐(菖蒲草、あやめぐさ) 余母疑(蓬)可豆良伎(髪蔓、かづらき) 左加(酒)美都伎(みづき) 安蘇比(遊び)奈具礼止(なぐれど) 射水河(射水川、いみづかは) 雪消(げ)溢(はふり)而(て) 逝(行く)水能(の) 伊夜(いや)末思(増し)尓(に)乃未(のみ)
↓
霍公鳥(ほととぎす) 来鳴く五月の 菖蒲草(あやめぐさ) 蓬(よもぎ)髪蔓(かづらき) 酒みづき 遊びなぐれど 射水川(いみづかは) 雪消(げ)溢(はふり)て 行く水の いや増しにのみ
意味
霍公鳥(ほととぎす)が 来て鳴く五月となり 菖蒲草(あやめぐさ)や 蓬(よもぎ)を縵(かづら)きにして頭を飾り 酒盛りして 遊んだけれど、 射水川(いみづかは)に 雪解け水が溢れて 流れ行く様に (あなたへの恋しさが)増すばかりです。
注記
髪蔓(かづらき)とは、つる草や花、この場合は、「菖蒲」や「蓬」の葉を輪にして頭上に戴く飾りとしたもの。菖蒲や蓬は香気が強いので穢れや邪気を祓うために使われましたが、万葉時代は酒席の場の趣向とされたようです。
一般名:ヨモギ(蓬)、学名:Artemisia princeps or Artemisia indica var. maximowiczii 、別名:Japanese mugwort、サシモグサ、モチグサ(餅草)、モグサ、分類名:植物界被子植物真正双子葉植物綱キク目キク科ヨモギ属、生息分布:日本全国、生息環境:畦道や山野、生活型:多年草、草丈:50~100cm、葉長:8cm、葉幅:4cm、葉形:羽状複葉、葉序:互生、 開花期:8~10月、花序形:円錐花序、花色:淡褐色、花冠形:管状花から成る頭花、花径:0.15cm、果実型:痩果、用途:若芽は野菜、モグサ、漢方薬、花粉飛散時期:8~10月。