果物シリーズ6 檸檬

レモン(檸檬、Lemon、学名:Citrus limon)は、ヒマラヤ原産でミカン科ミカン属の常緑低木です。四季咲きで、総状花序を伸ばし芳香のある白い五弁花を多数付けます。枝に棘のある品種と無い品種があります。花後に成る紡錘形の果実が利用されます。果実は緑色の時に収穫され、追熟で黄色にさせます。


レモンを主題とした代表小説


●「檸檬」 梶井基次郎 (青空文庫)

登場人物    私
場所      京都
登場する主な店 果物、丸善
出典      青空文庫


「不吉な塊」に心が圧迫され、焦燥感を感じていた頃、居た堪れず街から街を浮浪し続けた。

見すぼらしくて美しいものに惹かれた。表通りよりむさ苦しい裏通りが好きだった。朽ちたような場所で、勢いがあるのは向日葵カンナのような植物だけだ。

生活が蝕まれ、金がなかったが、二~三銭のもので、美しいものに慰められるようだ。
裏通りを歩き、駄菓子屋の前で立ち留り、乾物屋の乾蝦や棒鱈、湯葉を眺め、寺町通にある果物屋で足を留めた。その果物屋は私が最も好きな店で、果物屋固有の美しさが感ぜられた。青物の人参葉の美しさは素晴しく、水に漬つけた豆や慈姑もあった。

私は檸檬が好きだ。「レモンイエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの丈たけの詰まった紡錘形の恰好も」。私はレモンを一個買った。

レモンを握りしめた瞬間から、心の中の不吉な塊がいくらか弛んで来て私は街で非常に幸福だった。あんなに執拗かった憂鬱がレモン1個で紛らされた。レモンの果実を鼻に持っていって嗅いで、胸一杯に空気を吸い込んだら胸一杯の呼吸をしてなかった身体や顔に温い血が昇って来て元気が目覚めて来た。

レモンの「あんな単純な冷覚や触覚や嗅覚や視覚が、ずっと昔からこればかり探していたのだと言いたくなった。」
歩きながら「つまりはこの重さなんだな。その重さこそ常つねづね尋ねあぐんでいたもので、疑いもなくこの重さはすべての善いものすべての美しいものを重量に換算して来た重さである」とを思った。

気をよくした私はこのところ避けてきた丸善に行き、買うでもなく、本を取り出し手当たり次第に積み上げて、納得できる色彩にしその天辺に檸檬をのせて店を出た。
「変にくすぐったい気持が街の上の私を微笑ほほえませた。」

青空文庫 梶井基次郎「檸檬」

檸檬の種類や季語、花言葉はこちらへ


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