ムラサキ

Lithospermum erythrorhizon

万葉集でよまれた草木, 万葉集と草木染

  • ムラサキ
  • ムラサキ
  • 花名
    ムラサキ
  • 学名
    Lithospermum erythrorhizon
  • 別名Lithospermum erythrorhizon, 紫
  • 原産地日本
  • 開花場所庭, 低山
  • 開花期6月, 7月, 8月

ムラサキとは

ムラサキ(紫、Lithospermum erythrorhizon)は日本原産で、ムラサキ科ムラサキ属の多年草です。根から紫色の染料を採るために栽培されます。北海道、本州~四国・九州の山地の草原に自生しますが、現在では絶滅危惧種とされます。
草丈は30-60 cmで、直立した茎は上部で分枝します。夏に、茎先の葉腋にある苞葉の間から小さな白い漏斗状の花を咲かせます。花は先端が五裂します。根は濃紫色で生薬の「シコン(紫根)」の材料や紫色の染料とされます。
19世紀に人造染料が大量生産できるようになりましたが、それまでは草木や動物の皮や貝などを染料に使っていました。万葉時代、紫色は冠位十二階の最上位にあり権力の象徴や最上の贅沢とされた色ですが、この紫色の染料を採るのに「紫草(ムラサキ草)」が使われました。当時の染色手法としては、美しい紫色に布を染めるには、紫の根茎をぬるま湯に浸して杵で撞き色素を抽出し(染料となる)、それに焙煎用のつばきの灰を入れて定着させ、乾燥させる手順をとったと思われます。手順を以下に示します(推定)。


■紫の草木染の手順


①乾燥紫根(染料)をぬるま湯に入れて煮だし、ざるで濾して染色液を作る。【染色液-シコン】
 (紫色素(シコニン)は熱に弱いので70度以下のお湯とする)
②染色用の布を準備し、水に浸けておき、使用前に水を絞る。
③温めた①【染色液-シコン】に②の布を浸ける。【染め】
④【染め】た③の布を軽く絞る。
⑤椿の灰をぬるま湯に溶かし焙煎液を作る。【焙煎液ー椿】
 (特に藪椿にはアルミニウムイオンが多く含まれる)
⑥【焙煎液ー椿】⑤に、④【染め】た布を浸ける。【焙煎】
(アルミニウムイオン(媒染ー椿灰)とシコン(染めー紫草)の染料分子が繊維上で結合して紫色に染まるる)
⑦【染め】③と、【焙煎】⑥をくり返す
⑧陰干しする
と深みのある紫色の布が完成します。


万葉集と紫


万葉集でも「紫」という名前で詠まれています。以下の一首は紫(染料)に焙煎剤としてつばきの灰を入れて紫色の染料を作ることにかこつけた歌を詠っています。


万葉集 第12巻 3101番歌


作者 :不詳
題詞:問答歌(これは問歌の方)
登場する草木:紫


原文


紫者 灰指物曽 海石榴市之 八十街尓 相兒哉誰



紫者(は) 灰指(す)物曽(ぞ) 海石榴市(つばいち)之(の) 八十(やそ)(の)街(ちまた)尓(に) 相(あへる)兒(こ)哉(や)誰(たれ)

紫は 灰さすものぞ 海石榴市の 八十の街(ちまた)に 逢へるこ(君)や誰れ


意味


紫色に染めるには 椿の灰を入れるもの 椿市(つばいち)の 辻で 出逢った君は誰?

「紫は灰さすものぞ」は「海石榴市(つばいち)」を導く序詞。海石榴市は場所名ですが、「つば(海石榴)」と焙煎に使う「ツバキ」をかけています。
「兒哉誰(こや誰)」:この時代、相手の名前を聞くことは求婚を意味します。


一般名:ムラサキ(紫)、学名:Lithospermum erythrorhizon、分類名:植物界被子植物真正双子葉類シソ目ムラサキ科ムラサキ属ムラサキ種、原産地:日本、草丈:30-60 cm、葉柄:無、葉形:披針形、葉序:互生、葉色:緑、葉縁:全縁、花色:白、花径:0.6 cm、開花期:6-8月、果実色:灰白色、果実型:4分果。
同属にホタルカズラ(蛍葛、学名:Lithospermum zollinger)があります。

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特集 万葉集でよまれた草木


  • シソ
  • ムラサキ
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  • 花のタイプ
    放射相称花
  • 花序
    単頂花序
  • 花冠
    漏斗形/トランペット形
  • 葉形
    披針形
  • 葉縁
    全縁
  • 生活型常緑多年草
  • 花の色
  • 葉の色
  • 実の色茶 緑
  • 高さ30.0 ~ 60.0 cm
  • 花径0.6 ~ 0.6 cm

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